熱があるのになぜ寒い?悪寒と震えが起こる仕組みをわかりやすく解説

発熱時の悪寒と震えの仕組みを解説する記事のアイキャッチ画像(Photo by Amin Hasani on Unsplash)
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風邪や感染症で熱が出始めたとき、体温は上がっているのに『寒い』『布団に入りたい』『ガタガタ震える』と感じることがあります。少し不思議ですが、これは体温そのものが低いからとは限りません。

簡単に言うと、発熱の初期には脳が『今の体温ではまだ低い』と判断する方向へ体温調節が変化し、体が熱を逃がさず、さらに熱を作ろうとするためです。その結果、寒気や震えが起こります。

まず簡単に:熱があるのに寒く感じる流れ

発熱時の流れを大まかにすると、次のようになります。

  1. 感染や炎症が起こる
  2. 免疫反応をきっかけに、脳の体温調節へ信号が届く
  3. 体が『もっと体温を上げよう』とする
  4. 皮膚の血管を縮めて熱を逃がしにくくする
  5. 筋肉を震わせて熱を作る

つまり悪寒は、単に『熱が出た結果』というより、体温を上げる途中で起こる反応として理解すると分かりやすいです。

体には「温度調節システム」がある

人の体温は、外気温のように成り行きで変わっているわけではありません。脳の視床下部などが中心となり、熱を作る量と逃がす量を調節しています。

普段は、暑ければ汗をかき、皮膚の血流を増やして熱を逃がします。寒ければ皮膚の血流を減らし、必要に応じて震えて熱を作ります。

この普段の体温調節については、なぜ体温が低いのか?体温調節の仕組みでも解説しています。

発熱すると脳の判断が変わる

ここから少しだけ詳しく見てみましょう。

感染や炎症が起こると、免疫系からさまざまな信号が生じます。その情報を受けて、脳の血管周辺などでプロスタグランジンE2(PGE2)という物質が作られます。PGE2は発熱を起こす重要な仲介役の一つです。

PGE2が脳の体温調節に関わる神経回路へ作用すると、体は普段より高い体温を目指す方向へ動きます。よく『体温の設定温度が上がる』と説明される現象です。

たとえば体温が37℃あったとしても、体がそれより高い温度を目指している途中なら、現在の37℃を『まだ寒い』側として扱います。

なぜ手足が冷たくなるの?

体温を上げたいとき、体はせっかく作った熱を外へ逃がしたくありません。そこで皮膚の血管を縮め、皮膚へ流れる血液を減らします。

すると体の中心部では熱を保ちやすくなる一方、手足や皮膚は冷たく感じやすくなります。発熱の初期に『顔は熱っぽいのに手足が冷たい』ことがあるのは、この熱を守る反応が関係します。

ガタガタ震えるのは熱を作るため

強い寒気のときに起こる震えも意味があります。筋肉を細かく収縮させるとエネルギーが使われ、その一部が熱になります。

つまり震えは、体が自分で熱を作る仕組みの一つです。本人にはつらい反応ですが、体温調節という視点では『温めようとしている』状態です。

「寒気」と「発熱」はいつも同じではない

ここは重要な注意点です。寒気があれば必ず感染症による発熱、というわけではありません。また、すべての発熱で強い悪寒が起こるわけでもありません。

発熱は感染症だけでなく、炎症性疾患などさまざまな原因で起こります。強い症状や長引く発熱がある場合は、仕組みだけで自己判断せず医療機関への相談が必要です。

熱が下がるときは逆のことが起こる

発熱の原因となる信号が弱くなると、体温調節は通常の状態へ戻っていきます。すると今度は、上がっていた体温が『高すぎる』状態になります。

そこで皮膚の血管を広げ、汗をかいて熱を外へ逃がします。熱が下がるときに急に暑く感じたり汗をかいたりするのは、このためです。

風邪で眠くなるのも免疫反応の一部

感染したときには、体温だけでなく眠気や食欲なども変化します。なぜ風邪をひくと眠くなるのか?では、免疫反応と睡眠の関係を一般向けに解説しています。

まとめ

熱があるのに寒く感じるのは矛盾ではありません。発熱の初期には、体がより高い体温を目指す方向へ切り替わり、皮膚の血管を縮めたり筋肉を震わせたりして熱を守り、作ります。

『熱がある=いつでも暑く感じる』のではなく、体が今どの温度を目指しているかによって感覚と反応が変わると考えると理解しやすいでしょう。

参考文献

  • Evans SS, Repasky EA, Fisher DT. Fever and the thermal regulation of immunity: the immune system feels the heat. Nature Reviews Immunology. 2015.
  • Saper CB, Romanovsky AA, Scammell TE. Neural circuitry engaged by prostaglandins during the sickness syndrome. Nature Neuroscience. 2012.
  • Blomqvist A, Engblom D. Neural Mechanisms of Inflammation-Induced Fever. The Neuroscientist. 2018.
  • Yahiro T, Nakamura Y, Nakamura K. The pyrogenic mediator prostaglandin E2 elicits warmth seeking via EP3 receptor-expressing parabrachial neurons: a potential mechanism of chills. The Journal of Physiology. 2026.
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