あくびはなぜ出る?眠いときに起こる理由と『うつる』仕組みを科学で解説

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眠いときや退屈なとき、思わず大きく口を開けてしまう「あくび」。しかも、誰かがあくびをしているのを見るだけで、自分まであくびが出ることがあります。

まず結論から言うと、あくびの役割はまだ完全には決着していません。ただし、昔よく言われた「酸素が足りないからあくびをする」という説明は実験では支持されておらず、現在は眠りと覚醒の切り替わりや、脳の温度調節などとの関係が研究されています。

あくびは「酸素不足」のサインではない

あくびを見ると、大きく息を吸い込むので「体が酸素を欲しがっているのでは?」と思いやすいでしょう。しかし、酸素や二酸化炭素の濃度を変えても、あくびの回数は単純には変わらないことが古典的な実験で示されています。

つまり、あくび=酸素不足と考えるのは単純すぎます。深呼吸とあくびは見た目が似ていますが、同じ目的の行動ではないと考えられています。

では、なぜ眠いときに出やすいの?

あくびは、ずっと同じ状態のときよりも、眠る前、起きた直後、退屈しているときなど、脳の状態が切り替わる場面で出やすいことが知られています。

簡単に言えば、あくびは「眠気そのもの」というより、体と脳が別の状態へ移ろうとしているタイミングと関係している可能性があります。

あくびの前後には心拍数や自律神経活動などの変化も観察されています。ただし「あくびをすれば必ず目が覚める」とまで言い切れるわけではなく、その働きには複数の説があります。

有力な説の一つが「脳を冷やす」働き

少し意外なのが、あくびが脳の温度調節を助けるという説です。

あくびでは、口を大きく開けて顎や顔の筋肉を動かし、深く息を吸います。このとき顔や頭部の血流が変化し、外気も取り込まれます。こうした変化が脳周辺の熱を逃がすのに役立つのではないか、と考えられています。

動物や人を対象に、あくびと体温・環境温度の関係を調べた研究もあります。ただし、「あくびの目的は脳を冷やすことだけ」と確定したわけではありません。覚醒状態の調整など、複数の役割が重なっている可能性があります。

なぜ他人のあくびは「うつる」の?

あくびの面白いところは、自分が眠くなくても、他人のあくびを見たり聞いたり、場合によってはあくびについて考えるだけでも出ることがある点です。これを伝染性あくびと呼びます。

研究では、人だけでなく一部の社会性の高い動物でも似た現象が報告されています。そこで、集団の活動状態をそろえる「行動の同期」や、他者の状態を読み取る社会的な仕組みと関係するのではないかという説があります。

「共感力が高い人ほどあくびがうつる」は本当?

よく聞く説明ですが、ここは慎重に考える必要があります。親しい相手ほど伝染性あくびが起きやすいという研究がある一方、共感性との関係については研究結果が一貫していません。

そのため、あくびがうつったかどうかだけで、その人の共感力を判断することはできません。

あくびは動物にもある

あくびに似た行動は、人間だけのものではありません。多くの脊椎動物で観察されます。これは、あくびがかなり古い進化的起源をもつ行動である可能性を示しています。

動物の行動には、一見すると意味がなさそうでも、生存や集団生活と結びついた仕組みが隠れていることがあります。モアイ研究所では、動物が「死んだふり」をする理由や、動物が鳴く理由も生物学から解説しています。

まとめ:あくびは単なる「眠い合図」ではない

あくびの正体は、まだ一つの説明だけで片付けられるものではありません。現在の研究からは、少なくとも酸素不足を解消するためだけの行動ではないこと、眠りと覚醒などの状態変化と関係すること、脳の温度調節に関わる可能性があること、そして社会的には他者へ伝染することが分かっています。

普段は何気なくしているあくびですが、実は脳・自律神経・体温調節・社会行動が交差する、かなり奥深い生物学的現象なのです。

参考文献・資料

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