ゴミとして捨てたプラスチック容器。
「そのうち土に還るだろう」と、どこかで思っていませんか?
実はプラスチックは、
自然界ではほとんど“腐らない素材”です。
海や土壌に流れ出ると、数十年〜数百年単位で残り続けます。
なぜ、食べ物や木は腐るのに、プラスチックだけは残り続けるのか。
そこには生物学と化学のはっきりした理由があります。
この記事では、
- プラスチックが腐らない「7つの科学的理由」
- 腐敗と生分解の決定的な違い
- マイクロプラスチックが生まれる本当の仕組み
- 私たちが現実的にできる対策
を、専門知識を噛み砕いて解説します。
結論|プラスチックは「生き物の食べ物にならない」から腐らない
最初に結論です。
プラスチックは、生物が分解・利用できる構造をしていない
──これが最大の理由です。
腐敗や分解は、
「微生物が栄養として利用できるかどうか」で決まります。
プラスチックはその前提条件を、ほぼすべて満たしていません。
生物学・化学的理由|プラスチックが腐らない7つの理由
① 高分子構造で、酵素が歯が立たない
プラスチックは「ポリマー」と呼ばれる長い分子の鎖でできています。
これは例えるなら、
- 食べ物:短く切れるパスタ
- プラスチック:切れ目のないロープ
のような違い。
多くの微生物酵素は、
このロープ状分子を切断できません。
② 水をはじく(疎水性)ため、反応が進まない
腐敗や分解には「水」が必須です。
しかし多くのプラスチックは水を弾くため、
- 微生物が付着しにくい
- 酵素反応が進まない
という問題が起こります。
③ 結晶化構造で内部に侵入できない
ポリエチレンやナイロンなどは、
分子がぎっしり規則正しく並んだ結晶構造をしています。
そのため、
- 表面は劣化しても
- 内部はほぼ無傷
という状態が続きます。
④ 添加剤が「分解防止装置」になっている
プラスチック製品には、
- 紫外線吸収剤
- 酸化防止剤
- 可塑剤
などが含まれます。
これらは「長持ちさせるため」に入れられており、
結果として自然界でも分解を妨げます。
⑤ 自然界は「分解に最適な環境」ではない
生分解性プラスチックでも、
- 高温
- 高湿度
- 酸素量の管理
が揃った産業用コンポストでなければ分解が進みません。
海や土壌では、
条件が足りず、そのまま残るケースが多いのが現実です。
⑥ 細かくなっても「分解」ではない
プラスチックは紫外線や波で砕けますが、
これは分子が壊れたわけではありません。
- 分解 → CO₂や水になる
- 破砕 → マイクロプラスチックになる
この違いは非常に重要です。
⑦ 分解できる微生物がほとんど存在しない
PETを分解できる細菌は発見されていますが、
- 種類は限られる
- 分解速度は非常に遅い
大量のプラスチックを処理できる段階ではありません。
腐ることと私たちの生活に関する記事はこちらから
腐敗と生分解の違い(ここが誤解されやすい)
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 腐敗 | 微生物による変質(臭い・色の変化) |
| 生分解 | 無機物(CO₂・水)まで分解 |
プラスチックは
どちらにも当てはまりにくい素材なのです。
環境中で実際に起きていること
- 物理的劣化:細かく砕ける
- 光劣化:表面が脆くなる
- 化学劣化:自然条件では限定的
- 生物分解:ごく一部のみ
👉 結果として「消えずに残る」
マイナーだけど重要な視点(あなたの記事の強み)
プラスティスフィア
プラスチック表面には、
独自の微生物群集が形成されます。
これは新しい生態系である一方、
病原菌の温床になるリスクもあります。
マイクロプラスチックの吸着性
小さなプラスチックは、
- 農薬
- 有害化学物質
を吸着しやすく、
食物連鎖を通じて生物に入る可能性があります。
じゃあどうすればいい?(現実的な回答)
個人でできること
- 使い捨てを減らす
- マイボトル・布バッグ
- 洗ってリサイクルに出す
社会として必要なこと
- 分別回収の徹底
- 化学リサイクルの研究
- 生分解素材の正しい利用
よくある誤解
- ❌ 生分解性=自然で消える
- ❌ 細かくなれば安全
- ❌ リサイクルすれば解決
どれも部分的にしか正しくありません。
プラスチック問題を理解するために、
- 環境科学の入門書
- マイクロプラスチック解説書
- 子ども向け科学図鑑
を読む人もいます。
※ 学習・理解の補助として使われることが多いです
※ 必要だと感じた人だけで十分です
まとめ|プラスチックは腐らないが、循環はできる
プラスチックが腐らないのは、
- 分子構造
- 生物が使えない性質
- 環境条件
が重なった結果です。
完全に消すのは難しくても、
人間の設計次第で循環させることは可能です。
参考文献
Zhang, X. et al., Degradation of Polymer Materials in the Environment and (MDPI, 2024).
Zettler, E. R., et al., Life in the “Plastisphere”: Microbial Communities on Plastic Marine Debris (ACS, 2013).
Yoshida, S. et al., A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate) (Science, 2016).
ASTM D6400 — Standard Specification for Labeling of Plastics Designed to be Aerobically Composted in Municipal or Industrial Facilities (ASTM).
Menéndez-Pedriza, A. & Jaumot, J., Interaction of Environmental Pollutants with Microplastics (PMC, 2020).
Fu, L. et al., Adsorption behavior of organic pollutants on microplastics (ScienceDirect review, 2021).
Maddela, N. R. et al., Additives of plastics: Entry into the environment and… (ScienceDirect review, 2023).




