クモはなぜ自分の巣にくっつかない?糸の違いと脚の秘密

円形の巣にとまるクモ。細い網の糸が見える写真
モアイ研究所 - にほんブログ村

クモの巣に虫が引っかかるのに、巣を作ったクモは自由に歩いています。理由は「クモの脚には絶対にくっつかない魔法の油があるから」ではありません。巣の糸には粘着性のある部分とない部分があり、さらにクモの脚の細かな毛、糸への触れ方、脚表面の性質が組み合わさって、くっつきにくくなっているのです。特に円い網を張るクモを対象にした実験から、この仕組みが調べられています。

クモの巣は全部ベタベタしているわけではない

庭先で見かける円形の巣(円網)をよく見ると、中心から外側へ伸びる放射状の糸と、ぐるぐる巻かれた渦巻き状の糸があります。多くの円網では、獲物を捕まえる渦巻き状の「捕獲糸」に粘着性のある液滴がついています。一方、骨組みになる放射状の糸などは、基本的に粘着性がありません。

つまり、クモは粘着性のない糸も足場として使えます。ただし、これだけでは説明が終わりません。巣を作るとき、クモは粘着性のある捕獲糸にも何度も触れるからです。

秘密1:脚の細かな毛が接触を減らす

2012年に発表された研究では、円網を張るクモの脚にある枝分かれした細かな毛(剛毛)が注目されました。毛の構造によって、糸の粘着物質が脚の表面に広く接触しにくくなります。接触面積が小さければ、糸から脚を離しやすくなります。

これは「脚に毛が生えているから必ずくっつかない」という単純な話ではありません。毛の形と、粘着液滴との接触の仕方が重要です。

秘密2:脚の動かし方にもコツがある

クモは捕獲糸に脚を当てたり離したりするとき、粘着力が大きく働きにくい動きをします。研究者はクモが巣を作る様子を拡大撮影し、糸に対する脚の向きや引き離し方を観察しました。

虫が勢いよく飛び込んで複数の粘着液滴に触れる場合と、クモが糸を慎重に扱う場合とでは、糸への接触の仕方が違います。巣の「素材」だけでなく、クモ自身の「行動」も重要なのです。

秘密3:脚の表面にもくっつきにくい性質がある

脚の表面にある化学的な層が粘着を弱める可能性も、実験で支持されています。2012年の別の研究では、円網を張る2種のクモの脚を有機溶媒で処理すると、未処理の脚よりも捕獲糸に強く付着しました。

ただし、「クモは脚から油を分泌している」と断定するのは正確ではありません。表面の有機物が関与する証拠はありますが、その物質の正体や作られ方まで一律に明らかになったわけではありません。クモの種類によっても仕組みが異なる可能性があります。

それなら、クモは絶対に巣に引っかからない?

そうとは限りません。研究が示しているのは、クモが自分の巣で粘着を避けやすくする仕組みを備えているということです。そもそもすべてのクモが円形の粘着網を作るわけではなく、糸の使い方も多様です。

巣を見つけたら、獲物を捕らえる渦巻き状の糸と、骨組みの糸を目で追ってみてください。朝露がつくと網の形が見やすくなります。ただし、クモや巣を傷つけないよう、観察だけにとどめましょう。

身近な生き物の「くっつく」「くっつかない」は面白い

クモは脚と行動によって粘着を避けますが、ヤモリが壁を登れる仕組みでは足裏の微細な構造が接着を助けます。反対に、ハスの葉が水をはじく仕組みでは表面の細かな凹凸とワックスが働きます。生物の表面は、目的に合わせて異なる性質を持っているのです。

まとめ

クモが自分の巣にくっつきにくいのは、粘着糸と非粘着糸の使い分けに加え、脚の枝分かれした毛、接触を抑える動き、脚表面の化学的な性質が関係するためです。「クモだけが効かない接着剤」ではなく、体の構造と行動が組み合わさった仕組みと考えると理解しやすくなります。

参考文献・資料

Optimized with PageSpeed Ninja
タイトルとURLをコピーしました