フクロウはなぜ静かに飛べる?羽のギザギザと音を消す仕組み

翼を広げて飛ぶメンフクロウ。静かな飛行を可能にする羽の構造を紹介する記事のアイキャッチ
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フクロウが静かに飛べる大きな理由は、翼の羽に、空気の流れや羽同士の摩擦音を抑える細かな構造があるためです。特に注目されるのが、翼の前側のくし状の突起、後ろ側の細かな房、羽の表面を覆う柔らかな毛のような構造です。

ただし、フクロウの飛行音が完全にゼロになるわけではありません。また、フクロウの種類や飛び方によって、静かさは異なります。何が分かっていて、どこに研究の余地があるのかを見ていきましょう。

なぜ鳥が飛ぶと音が出るの?

鳥が翼を動かすと、翼の周りの空気が押され、流れが乱れることがあります。こうした空気の変動は、私たちが聞く「バサッ」「ヒュッ」という飛行音の一因になります。さらに、羽が互いに触れたり擦れたりして音が出る場合もあります。

フクロウの静かな飛行を理解するには、空気の流れによる音と、羽そのものが接触して出す音を分けて考えることが大切です。

秘密1:翼の前側にある「くし状のギザギザ」

翼の前側、空気が最初に当たる部分を「前縁(ぜんえん)」と呼びます。多くのフクロウでは、外側の風切羽にくしの歯のような突起が並びます。風切羽は、翼を支え、飛ぶときの力を生み出す大きな羽です。

この突起は空気の流れ方に影響します。2017年の風洞実験では、メンフクロウの翼からくし状構造を取り除いた場合と残した場合を比較し、翼が大きく傾いた条件で、突起があるほうが滑空時の騒音が小さくなることが示されました。低い角度では同じ効果が必ず出るわけではなく、効果の大きさも限定的でした。

つまり、ギザギザがあるだけでどんな飛び方でも無音になるのではなく、特定の空気の流れで騒音を減らす働きが確認されているのです。

秘密2:翼の後ろ側にある「房状の縁」

翼の後ろ側は「後縁(こうえん)」と呼ばれます。フクロウの翼の後縁には、細く柔らかな羽の縁が房のように伸びています。

2023年に発表された研究では、実際のフクロウの翼の形を参考にした3次元モデルを使い、この房がある場合とない場合の空気の流れを計算しました。その結果、房のあるモデルでは、後縁付近の大きな渦や翼端の羽同士の流れの干渉が抑えられ、騒音が低減することが示されました。

渦とは、空気がぐるぐると回る流れのこと。大きく変動する渦が生む音を弱めることが、静かな飛行につながると考えられています。ただし、この研究は数値シミュレーションによる検証であり、野生のフクロウが飛ぶすべての状況を直接測定したものではありません。

秘密3:羽の表面が「ビロード」のように柔らかい

フクロウの風切羽の表面には、非常に細い糸のような構造が生えています。触ると布のビロードに似た質感を持つため、英語の研究では「velvet(ベルベット)」と呼ばれます。

この構造には、羽同士が擦れるときの音を抑える働きがあると考えられています。2025年に『Journal of Experimental Biology』に掲載された研究では、複数の鳥の羽を実験的に擦り合わせ、発生する音を測定しました。ベルベット状の構造を持つ鳥の羽は、持たない鳥の羽より平均して約20.9デシベル静かでした。さらに、その構造をスプレーで固めると、擦れる音が大きくなりました。

この数字は羽を擦り合わせた実験の比較であり、野外を飛ぶフクロウの音がほかの鳥より常に20.9デシベル小さいという意味ではありません。実験は、羽の表面が「空気の音」だけでなく「羽同士の接触音」も減らし得ることを示しています。

静かな飛行は狩りにどう役立つ?

フクロウには夜間や薄暗い時間帯に活動し、ネズミなどの小動物を捕らえる種類がいます。静かに飛べれば、獲物に接近を気づかれにくくなる可能性があります。また、自分の翼が出す音が小さいと、獲物の足音などを聞き取りやすくなるとも考えられます。

ただし、すべてのフクロウが夜行性というわけではありません。2021年に公表された比較研究では、夜間に活動する種類ほど前縁のくし状構造が発達する傾向が報告されています。羽の形は、生活する時間帯や狩りの方法とも関係している可能性があるのです。

フクロウの羽は飛行機やドローンにも応用できる?

翼のギザギザや後縁の房を模した形は、ドローンのプロペラ、風力発電機の羽根などの騒音を減らす研究のヒントになっています。こうした、生き物の仕組みを工学に取り入れる考え方を「バイオミメティクス(生物模倣)」と呼びます。

ただし、フクロウの羽をそのまま機械に貼れば静かになるわけではありません。翼の速さ、大きさ、空気の流れ方が違うため、実際の機械に合う形を設計し、騒音と効率を両方測る必要があります。

フクロウの羽を見るときのポイント

展示施設や図鑑などでフクロウの翼を見る機会があれば、翼の前側と後ろ側の縁、羽の表面に注目してみてください。羽を傷めるような接触や、野生の鳥を追いかける行為は避けましょう。

ほかの鳥の体の仕組みも気になる方は、フラミンゴが片足で立てる理由をどうぞ。鳥の進化については鳥と恐竜の関係でも紹介しています。

まとめ:静かな飛行は羽の細かな工夫から生まれる

フクロウの飛行音が小さいのは、翼の前縁のくし状構造、後縁の房、表面の柔らかな構造などが、それぞれ異なる音の発生過程に作用するためです。これらの仕組みは、風洞実験、数値シミュレーション、羽の摩擦実験によって少しずつ解明されてきました。

フクロウは「音を完全に消す鳥」ではありません。しかし、その羽には、静かに獲物へ近づくための驚くほど精巧な工夫が見つかっています。

参考文献

  1. Geyer TF, Claus VT, Hall PM, Sarradj E. Silent owl flight: The effect of the leading edge comb. International Journal of Aeroacoustics. 2017;16:115–134. doi:10.1177/1475472X17706131
  2. Rong J, Jiang Y, Murayama Y, et al. Trailing-edge fringes enable robust aerodynamic force production and noise suppression in an owl wing model. Bioinspiration & Biomimetics. 2023;19:016003. doi:10.1088/1748-3190/ad0aa9
  3. Liu LG, Clark CJ. Acoustics of rubbing feathers: the velvet of owl feathers reduces frictional noise. Journal of Experimental Biology. 2025;228:jeb246234. doi:10.1242/jeb.246234
  4. Le Piane K, Clark CJ. Quiet flight, the leading edge comb, and their ecological correlates in owls (Strigiformes). Biological Journal of the Linnean Society. 2022;135:84–97. doi:10.1093/biolinnean/blab138

アイキャッチ写真:Bob Brewer / Unsplash

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