はじめに
「ビタミンK」と聞くと、「血を固めるビタミン」というイメージがある人も多いと思います。
しかし、実はビタミンKは骨を強くする、血管の健康を守る、さらには腸内細菌と協力して働くなど、多くの生物学的な役割を持っています。
近年、研究の進展によりビタミンKの奥深い働きが明らかになってきました。
本記事では、「ビタミンKの効果6選」として、その科学的背景をわかりやすく紹介します。
食生活にどのように取り入れるべきか、またどんな人が注意すべきかも解説します。

ビタミンに関する基礎や各ビタミンの概要や作用機序はこちらから!
1. ビタミンKの基本 ― 実は2種類ある

ビタミンKには、大きく分けて2つの種類があります。
- ビタミンK1(フィロキノン):主に植物由来。ほうれん草やブロッコリー、キャベツなど緑色野菜に多く含まれます。
- ビタミンK2(メナキノン):動物性食品や発酵食品に含まれ、腸内細菌によっても作られます。納豆やチーズ、卵黄などが代表的です。
K1は主に「血液凝固」に関係し、K2は「骨」や「血管の健康」に関係することが知られています。
つまり、ビタミンKは一つの栄養素ではなく、複数の化学的な“仲間たち”の総称なのです。

2. 血を固める「縁の下の力持ち」

ビタミンKが最もよく知られている役割は、血液凝固のサポートです。
血が出たとき、自然に止まるのは「凝固因子」というタンパク質が働いて血液を固めるからです。
このときビタミンKは、凝固因子を「活性型」に変えるための補酵素として機能します。
ビタミンKが不足すると、出血が止まりにくくなったり、あざができやすくなることがあります。
特に新生児は腸内細菌がまだ発達していないため、出生時にビタミンKを与えるのが一般的です。
3. 骨を強くする!カルシウムの“案内人”

骨を作るのはカルシウムだけではありません。
実はビタミンKは、カルシウムを骨に運ぶための案内役でもあります。
ビタミンKは「オステオカルシン」という骨形成タンパク質を活性化し、カルシウムを骨の中にしっかり固定する働きを助けます。
不足すると、せっかくカルシウムを摂っても骨にうまく届かず、骨密度の低下や骨折リスクの増加につながる可能性があります。
特に閉経後の女性や高齢者では、骨粗しょう症予防の観点からもビタミンKの十分な摂取が大切です。

4. 動脈硬化を防ぐ?血管の“若返りビタミン”

あまり知られていませんが、ビタミンKには血管の石灰化(カルシウムの沈着)を防ぐ働きもあります。
これは「マトリックスGlaタンパク質(MGP)」というK依存性のタンパク質のおかげです。
MGPは血管の壁にカルシウムがたまるのを防ぎ、動脈硬化や血管の老化を抑えます。
最近では、「ビタミンKをしっかり摂っている人は心血管疾患のリスクが低い」という報告もあり、
**“血管の若返りビタミン”**として注目されています。
5. 腸内細菌が作る「天然ビタミンK」

腸内環境が整っていると、腸内細菌がビタミンK2を自ら作り出すことができます。
特に「バクテロイデス属」や「エンテロバクター属」の一部の菌が関与していることがわかっています。
この腸内由来のK2は、体内の補給源として無視できない存在です。
つまり、腸を健康に保つことは、ビタミンKの自給にもつながるというわけです。
発酵食品(納豆・ヨーグルト・キムチなど)を食べることは、腸内細菌の働きを助け、間接的にビタミンKの生成をサポートします。

ヨーグルトってどれもおいしいんですが、製品によって味わいや口当たりって全然違うんですよね。私はこちらのヨーグルトがねっとりとしており、お気に入りです!

6. 注意したいポイント ― ワルファリンとの関係

血液をサラサラにする薬「ワルファリン」は、実はビタミンKの働きを抑える薬です。
このため、ビタミンKを多く含む食品を急に食べたり、摂取量を変えると、薬の効果が変わってしまうことがあります。
ワルファリンを服用している方は、
- 緑黄色野菜や納豆などの摂取量を急に増やさない
- 医師や薬剤師に相談して、食事バランスを維持する
ことが大切です。
最近では、「一定量のビタミンKを毎日摂るほうが安定しやすい」という報告もあり、**“制限”よりも“安定摂取”**がキーワードになっています。
ビタミンKを多く含む食品一覧(覚えておくと便利!)
食品名 | 含まれるKの種類 | 備考 |
---|---|---|
納豆 | K2(メナキノン-7) | 最も豊富な供給源 |
ほうれん草・ブロッコリー | K1(フィロキノン) | 加熱しても比較的安定 |
チーズ・卵黄 | K2(メナキノン) | 動物性食品の代表 |
キムチ・ヨーグルト | K2(微量) | 腸内環境をサポート |
海苔・抹茶 | K1 | 日本独特の優秀食材 |
まとめ ― 「血と骨と腸」を支える縁の下の力持ち
ビタミンKは目立たない存在ですが、私たちの生命活動の根本を支える重要な栄養素です。
- 血を固めてケガの回復を助ける
- 骨を強く保つ
- 血管を健康に保つ
- 腸内細菌と共に働く
これらの機能がうまく連携しているからこそ、体はバランスを保っています。
現代人は外食や加工食品中心の生活で、野菜・発酵食品の摂取が不足しがちです。
毎日の食卓に、緑の野菜と発酵食品を少しずつ取り入れることが、
長期的な健康を支える最も自然で効果的な方法です。
参考文献(本文中にはリンクを貼っていません)
- 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「栄養素の通覧:ビタミンK」
- Linus Pauling Institute. Vitamin K Overview
- NIH Office of Dietary Supplements. Vitamin K Fact Sheet
- Journal of Nutrition Reviews. Vitamin K and Bone Health
- Nature Reviews. The Role of Vitamin K in Vascular Health
