山火事や台風、洪水のニュースを見るたびに、
「ここまで壊れて、本当に自然は元に戻るのだろうか?」
と感じたことはありませんか?
一方で、数年後に同じ場所を訪れると、草が生え、虫が戻り、いつの間にか森のようになっていることもあります。
なぜ自然は、壊れても“また動き出せる”のでしょうか?
結論から言うと、
生態系には最初から「壊れることを前提にした回復の仕組み」が組み込まれているからです。
この記事では、
- なぜ攪乱(山火事・洪水・伐採など)の後でも自然が復活できるのか
- その裏で、生物たちが何をしているのか
- 私たち人間に何ができるのか
を、生物学を「説明役」として使いながら、自分ごととして理解できる形で解説します。
結論:自然は「元に戻る」のではなく「戻れる仕組み」を持っている
生態系は、完全に元通りになるわけではありません。
ですが多くの場合、機能的に“また生き物が循環できる状態”へ戻ります。
これは偶然ではなく、
- 環境が回復の舞台を整え
- 生き物がそれぞれ役割を果たし
- 周囲とのつながりが再起動を助ける
という 複数の仕組みが同時に動くからです。
ここから、その理由を6つに分けて見ていきます。
① 実は自然は「壊れる前提」で設計されている(レジリエンス)
生態学では、自然の回復力を レジリエンス と呼びます。
これは単なる「強さ」ではありません。
- 壊されにくさ(抵抗力)
- 壊れても戻る速さ(回復力)
の両方を含みます。
たとえば山火事が頻発する地域の植物は、
燃えたあとに芽を出す仕組みを最初から持っています。
つまり自然は、
「壊れない世界」を目指しているのではなく、
「壊れても続く世界」を前提に進化してきたのです。
② 回復できるかどうかは「土と水」でほぼ決まる
攪乱後の回復で最初に影響するのは、生き物よりも環境の状態です。
- 土に栄養が残っているか
- 水が極端に多すぎたり少なすぎたりしないか
- 有害な物質が長く残らないか
これは、家を建て直すときの地盤と同じです。
土壌や水環境が壊れすぎていなければ、
生き物は「戻る余地」を見つけられます。
逆に、環境の土台が崩れていると、
どれだけ種をまいても回復は進みません。
③ 生き物は「戻ってくる」のではなく「残っている」
よくある誤解ですが、
攪乱後に生き物が戻るのは「外から全部来る」わけではありません。
実際には、
- 土の中に眠っていた種子(種子バンク)
- 地下や水底に残っていた微生物
- 小さな隙間に逃げ込んだ昆虫や菌類
が、生き残って再スタートします。
雑草がすぐ生えるのも同じ原理です。
見えなくなっていただけで、完全には消えていなかったのです。
④ 回復のスピードは「周りとつながっているか」で変わる
自然は孤立すると回復が遅れます。
- 近くに森や川があれば、種や動物が供給される
- 道路やコンクリートで分断されると、移動できない
これは人間社会と似ています。
助け合える隣人がいる町と、孤立した町では再建の速さが違います。
生態系もまた、ネットワークとして回復します。
⑤ 人間が手を出すべきとき・出さない方がいいとき
自然に任せた方がいい場合もあれば、
人の手が必要な場合もあります。
- 土壌が極端に流出している
- 外来種が先に広がってしまった
- 回復の「種」が残っていない
こうした場合は、
- 地域に合った植物を補う
- 土壌環境を整える
- 定期的に観察して方法を変える
といった サポート役が有効です。
ただし「とりあえず植える」は逆効果になることもあります。
⑥ 実は重要なのに見落とされがちな要素
回復を支えるのは、目立たない存在です。
- 倒木や枯葉(栄養の供給源)
- 小さな岩陰や割れ目(避難所)
- まだ戻っていないが、戻れる可能性を持つ生物(暗黒多様性)
これらは派手ではありませんが、
回復の“タネ”を保持する装置として働きます。
まとめ:自然は「勝手に戻る」のではない
自然は魔法のように回復するわけではありません。
- 壊れる前提の仕組み
- 環境という舞台
- 生き残った生物
- つながり
- 適切な人間の関わり
これらが揃ったとき、
生態系は再び動き出します。
この仕組みを知ることは、
「守る」「壊さない」だけでなく、
どう付き合うかを考える第一歩になります。
もし身近な自然や環境に興味が出たら、
- 生態系復元に関する入門書を読んでみる
- フィールド観察用の簡単な図鑑を使う
- 自治体の自然再生活動を調べてみる
など、できることは色々あります。
本格的な調査機材は不要ですが、
実際に使われているものとしては
「フィールドノート」「簡易ルーペ」などがあります。
参考にしたリンク
- IPBES: https://ipbes.net/
- Society for Ecological Restoration (SER): https://www.ser.org/
- Nature: https://www.nature.com/
- Journal of Applied Ecology: https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/journal/13652664
- FAO: https://www.fao.org/



