松ぼっくりが雨で閉じ、乾燥すると開くのは、鱗片(りんぺん)の組織が水分を吸ったり放出したりして、曲がるためです。鱗片とは松ぼっくりの表面に重なった木質のうろこのような部分。成熟した松ぼっくりでは、生きた細胞からの指令がなくても動きます。
雨の日に閉じるのはなぜ?
マツの仲間の多くは、成熟した球果(松ぼっくり)が乾くと開き、湿ると閉じます。開くと内部の種子が外へ出やすくなります。乾燥した条件では風による種子散布が起こりやすいと考えられています。ただし、散布距離は風や周囲の地形などにも左右されます。
水を吸う層と変形しにくい層
鱗片は単純な一枚板ではありません。水を吸うと伸び縮みしやすい組織と、比較的変形しにくい繊維質の組織があります。この違いが鱗片を曲げます。湿度による受動的な形の変化は「吸湿運動」と呼ばれます。1997年の『Nature』論文では、成熟した松ぼっくりの鱗片が湿度に応じて動くことが報告されました。その後の研究でも、組織ごとの吸水と力学特性が調べられています。
拾った松ぼっくりでも動く?
構造が保たれていれば、木から落ちた松ぼっくりでも動きます。乾いて開いた松ぼっくりを室温の水に浸し、一定時間ごとに形を観察しましょう。取り出して自然乾燥させると再び開く場合があります。反応の速さは種類や状態、温度で変わります。熱湯や電子レンジは使わず、作業後は手を洗いましょう。
すべての松ぼっくりが同じように開く?
いいえ。樹種や成熟段階によって異なります。一部のマツでは樹脂などが球果を閉じたまま保ち、高温が開放のきっかけになることもあります。どの松ぼっくりも雨で閉じるとは限りません。
植物と水の関係を比べてみよう
松ぼっくりは水分の出入りによって形が変わります。一方、ハスの葉が水をはじく仕組みでは、表面の細かな凹凸とワックスが重要です。季節による植物の変化は紅葉で葉の色が変わる理由も参考になります。
まとめ
松ぼっくりの開閉は、鱗片の組織が湿度に応じて異なる割合で膨張・収縮するために起こります。身近な自然物にも、物理の仕組みを利用した巧みな構造が隠れています。
参考文献
- Dawson C, Vincent JFV, Rocca AM. How pine cones open. Nature. 1997;390:668. doi:10.1038/37745
- Eger CJ, et al. The Structural and Mechanical Basis for Passive-Hydraulic Pine Cone Actuation. Advanced Science. 2022;9:2200458. doi:10.1002/advs.202200458
- Song K, et al. Journey of water in pine cones. Scientific Reports. 2015;5:9963. doi:10.1038/srep09963
アイキャッチ写真:Robert Zunikoff / Unsplash

