はじめに
ハワイには、世界でも珍しい固有の鳥がたくさん生息しています。しかし近年、これらの鳥たちが深刻な危機にさらされていることが、最新の研究で明らかになりました。原因は外来鳥の侵入や、蚊を媒介とする病気の拡大です。これにより、在来鳥の個体数は急速に減少し、自然の生態系のバランスにも影響が出始めています。この記事では、最新の調査結果をもとに、ハワイの鳥たちに何が起きているのか、そして私たちにできる保全の取り組みについて解説します。
カウアイ島の鳥たちの現状

ハワイのカウアイ島では、長期にわたる調査で在来鳥の個体数が減少し、代わりに外来種の鳥が増えていることが確認されています。特に問題となっているのは、マラリアなどの病気です。これまで高地にしかいなかった蚊が、気候変動の影響で低地や中高度まで広がり、在来鳥が病気にかかるリスクが高まっています。その結果、繁殖に成功する鳥が減り、個体数の減少につながっています。
外来鳥の影響

ハワイに持ち込まれた外来鳥は、餌や巣の場所をめぐって在来鳥と競争しています。移入種は一部で種子を運ぶ役割もありますが、在来鳥とのバランスを崩し、生態系全体に変化をもたらしています。特に低地や中高度では、外来鳥が増えるにつれて在来鳥の生存環境が狭まり、自然繁殖の場も減少しているのが現状です。
標高と病気の関係

これまで在来鳥は、標高の高い場所に逃げることで蚊による病気から身を守ってきました。しかし現在、蚊の分布が標高の高い地域にも広がっており、在来鳥が病気にかかるリスクはますます高くなっています。特にカウアイ島の ʻiʻiwi や ʻakekeʻe といった固有種では、この影響が顕著で、個体数が大きく減少しています。
長期調査が示す変化の兆し

長期的な調査データから、低地や中高度の森林で在来鳥が減り、外来鳥が増えていることが明らかになっています。これまで安全地帯とされてきた高地でも、外来鳥や蚊の進出により在来鳥の生存は難しくなりつつあります。このままの状況が続けば、将来的にはさらに多くの鳥が絶滅の危機に直面することが予想されています。
保全の取り組みと課題

ハワイの鳥たちを守るためには、病気の管理と外来鳥の抑制、そして安全な繁殖地の確保が重要です。具体的には、蚊の監視や制御、病気への耐性を高める研究、外来鳥の個体数管理、そして保護区域の整備が必要です。これらを組み合わせることで、在来鳥が安心して暮らせる環境を維持することができます。また、地域の人々や観光客への環境教育も重要で、みんなで鳥たちを守る意識を高めることが求められます。
今後の展望
ハワイの固有鳥類は、外来種と病気という二重の圧力に直面しています。研究者や保全団体、地域住民が協力し、適切な管理を進めることで、絶滅の危機にある鳥たちの未来を守ることができます。小さな行動でも、鳥たちの生存に大きな影響を与える可能性があります。私たちが今、保全に取り組むことが、ハワイの自然を未来に残す鍵となります。
参考文献
- Disease‑driven collapse of the native Kauaʻi avifauna and the rise of introduced bird species. Biodiversity and Conservation (2025)
- U.S. Geological Survey & U.S. Fish and Wildlife Service, 「Native forest bird population declines within the Big Island National Wildlife Refuge Complex」報告 (2024)
- Conservation Ecology of Hawaiian Forest Birds – USGS (プロジェクト紹介)
- Population trends of native and non-native forest birds on the island of Molokai, Hawaii. Wilson Journal of Ornithology (2025)
- Non‑native birds take over Oʻahu, alter seed dispersal. University of Hawaiʻi System News (2021)
- Japanese white-eye in Hawaii — Wikipedia

