夜の森で光るホタル、深海で青白く輝くクラゲ。
私たちは古くから「光る生き物」に不思議さやロマンを感じてきました。
しかし、生物が光るのは単なる演出ではありません。
生物発光(bioluminescence) は、進化の過程で「生き残るため」に獲得された、極めて合理的な能力です。
本記事では、生物発光の基本的な仕組みから、代表的な発光生物、そして「なぜ光るのか」「いつから光り始めたのか」までを、最新研究を交えてわかりやすく解説します。
生物発光の仕組み|なぜ熱を出さずに光れるのか

生物発光の正体は、化学反応によって直接光を生み出す仕組みです。
多くの発光生物では、
- 発光基質:ルシフェリン
- 酵素:ルシフェラーゼ
この2つが酸素と反応することで光が生まれます。
驚くべき点はその効率です。
この反応は化学エネルギーをほぼ無駄なく光に変換し、**発光効率はほぼ100%**とされています(Haddock et al., 2010)。
💡 人工の電球が熱くなるのに対し、生物発光はほとんど熱を出しません。
この性質は、次世代の省エネルギー光源研究にも応用が期待されています。
光る生物の例|身近な森から深海まで

ホタル|光で会話する昆虫
ホタルは、光を使って仲間とコミュニケーションをとる代表的な生物です。
特にオスは、種ごとに決まったリズムで発光し、メスに自分の存在をアピールします。
この光は外部刺激による反射ではなく、体内で自ら制御して発光しています。

ほとんどの生物は細胞内で発光していると考えられています。クラゲやクリオネなどの無脊椎動物が代表例です。
キノコ|なぜ光るのか、まだ完全にはわからない
ヤコウタケなど、一部のキノコも発光します。
夜の森で淡く緑色に光る姿は幻想的ですが、なぜ光るのかは完全には解明されていません。
近年の研究で、キノコ特有のルシフェリンと酵素反応が関与していることは分かってきましたが、
- 虫を引き寄せて胞子を運ばせる
- 代謝の副産物
など、複数の仮説が存在しています。
カタツムリ|陸上でも光る生物がいる
最近の研究で、陸生のカタツムリが継続的に発光することが報告されました。
これは非常に珍しく、発光する陸生軟体動物はごくわずかです。
この発見は、「生物発光=深海」という固定観念を大きく揺るがしました。
なぜ生物は光るのか|4つの主な理由

生物が光る理由は一つではありません。主に次のような目的が考えられています。
① 求愛・コミュニケーション
ホタルのように、光を使って仲間や異性と情報をやり取りします。
② 捕食者から身を守る
突然発光して相手を驚かせたり、自分の輪郭を消したりする防御戦略です。
③ 獲物をおびき寄せる
チョウチンアンコウのように、光で獲物を誘い込む例もあります。
④ 仲間との識別
深海では視覚情報が乏しいため、光が「身分証明」の役割を果たします。

昆虫などを捕食するために、発光するという考え方もあります。チョウチンアンコウなどが良い例ではありますが、昆虫が光によってくるには、紫外線が必要なはずです。紫外線も放出しているのかは研究する必要があります。
光る生き物の歴史|発光は何度も独立して進化した

生物発光は、一度だけ進化した能力ではありません。
研究によると、発光能力は生物の系統ごとに何度も独立して進化してきたと考えられています。
最古の発光生物の一つは深海のサンゴで、
移動せずに獲物を引き寄せるために発光していたと推測されています。
発光の起源については、
- 発光バクテリア
- 海ほたるなどの単細胞生物
が初期段階だった可能性が高いとされています。
おわりに|光ることは、生き残るための戦略だった
生物発光は、幻想的な自然現象であると同時に、極めて実用的な進化の産物です。
暗闇の中で光るという行為は、
- 見つけてもらう
- 見つからない
- 餌を得る
といった、生きるための選択でした。
今もなお、生物発光の世界には多くの謎が残されています。
その解明は、生物学だけでなく、医療・工学・環境技術にも新たな可能性をもたらすでしょう。
参考文献・出典
- Haddock, S. H. D., Moline, M. A., & Case, J. F. (2010).
Bioluminescence in the Sea.
Annual Review of Marine Science, 2, 443–493. - Treehugger
10 Bioluminescent Mushrooms That Glow in the Dark
https://www.treehugger.com/bioluminescent-fungi-mushrooms-that-glow-in-the-dark-4868794 - A new discovery of the bioluminescent terrestrial snail genus Phuphania
(Gastropoda: Dyakiidae)
https://www.asahi.com/ajw/articles/15022839 - Evolution of bioluminescence in Anthozoa with emphasis on Octocorallia
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.2626


