地球には、暗闇を照らすように自ら光を放つ生物たちが存在します。深海や熱帯雨林、そして身近な森林の中に至るまで、多種多様な生物が発光能力を獲得してきました。この「生物発光(bioluminescence)」は、単なる美しい現象にとどまらず、進化の過程で生存や繁殖に大きな役割を果たしてきたと考えられています。本稿では、生物発光の仕組み、代表例、進化的意義について解説し、近年の研究成果を交えながらその謎に迫ります。
生物発光の仕組み

発光生物は、細胞内で「ルシフェリン(luciferin)」という発光基質と「ルシフェラーゼ(luciferase)」という酵素の反応を利用して光を生じます。この反応は酸素を必要とし、ATPや補因子が関与する場合もあります。化学エネルギーを直接光エネルギーに変換するため、効率は非常に高く、発光効率はほぼ100%に近いと報告されています(Haddock et al., 2010)。このような効率の高さは、人工的な光源の研究にも応用が期待されています。
Haddock, S. H. D., Moline, M. A., & Case, J. F. (2010). Bioluminescence in the Sea. Annual Review of Marine Science, 2, 443–493.
光る生物の例

ホタル
ホタルは、求愛のために、リズミカルに光ることが知られています。このような、自発的に発光する生物は生物発光タンパク質を含む細胞を持っています。これらのタンパク質は、酸素と特定の化学物質(ルシフェリンやルシフェラーゼなど)の存在下で、酵素反応を通じて光を発生させます。この過程は生物発光として知られており、外部からの刺激(例えば、刺激されるとホタルが光を発するように)ではなく、生物自体によって制御されます。

ほとんどの生物は細胞内で発光していると考えられています。クラゲやクリオネなどの無脊椎動物が代表例です。
キノコ
キノコのいくつかの種類は、発光することが知られており、これらのキノコは、夜に特に目立ち、その光り方は謎めいています。なぜ光るのかは、わかっていません。最近の研究では、光るメカニズムが一部解明され、特定の化合物と酵素の反応によって光ることがわかっています。八丈島でよく見られる光るキノコには、ヤコウタケやエナシラッシタケなどがあります。これらのキノコは、特定の樹木や葉の上に群生し、自然の中で美しい光景を作り出します。
引用
10 Bioluminescent Mushrooms That Glow in the Dark
https://www.treehugger.com/bioluminescent-fungi-mushrooms-that-glow-in-the-dark-4868794
カタツムリ
カタツムリの発光について新たな発見が報告されました。継続的な緑色の光を発することが明らかにされました。今までで見つかっていた発光陸生軟体動物は、1種類だけでしたが、新たに4種の光るカタツムリが発見されました。
引用
A new discovery of the bioluminescent terrestrial snail genus Phuphania (Gastropoda: Dyakiidae)
https://www.asahi.com/ajw/articles/15022839
なぜ生物は光るのか

生物が光る理由は多岐にわたります。その理由は生物の種類や環境によって異なりますが、いくつかの一般的な要因が挙げられます。まず、光は生殖行動を促進するために利用されることがあります。メスを引き付けるためにオスが発行する仕組みは主に昆虫によく見られます。また、光は捕食者からの防御にも役立ちます。光を放出することで自分を見つけにくくし、捕食者から身を守ることができます。特に夜行性の生物が昼行性の捕食者から逃れるために光を利用することがよく見られます。最後に、獲物を捕食するために発光したり、仲間とのコミュニケーションに使われているのではという考えもあります。

昆虫などを捕食するために、発光するという考え方もあります。チョウチンアンコウなどが良い例ではありますが、昆虫が光によってくるには、紫外線が必要なはずです。紫外線も放出しているのかは研究する必要があります。
光る生き物の歴史

では、生物発光に関する仕組みは、どのような歴史があるのでしょうか、使い道に関しては、獲物をおびき寄せたり、求愛行動をしたりなどを行っていると前述しました。これまでに生物発光してきた生物で一番古いものは、最近の研究により、深海のサンゴとされています。発光の目的としては、深海で移動せずに餌をおびき寄せていたとされています。発光生物の進化的には、近縁な属でも一方だけが発光することもあり、独立で進化したものと考えられています。基本的には、発酵成分は、ルシフェリンとルシフェラーゼの反応とされており、起源は、発光バクテリアや海ほたるなどが正合成していることから、一部の単細胞生物が起源ではないかとされています。
引用
Evolution of bioluminescence in Anthozoa with emphasis on Octocorallia
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.2626
おわりに
生物の光る世界は、未だに多くの秘密を秘めています。進化の歴史や生態系における役割など、さらなる研究が待たれます。私たちの理解が深まるにつれて、この魅惑的な現象がもたらす驚異的な側面について、ますます多くの情報が明らかになることでしょう。