アリはなぜ行列をつくる?フェロモンで道を伝える仕組み

地面を列になって移動する複数のアリの写真
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アリが行列をつくる主な理由は、仲間が地面などに残した「道しるべのにおい」をたどっているからです。このにおいの正体は、アリが体から出す化学物質「道しるべフェロモン」。餌を見つけたアリが道を残し、後から来た仲間が同じ道を使うことで、目に見える行列が生まれます。

ただし、すべてのアリが同じ方法で行列をつくるわけではありません。種類や状況によって、目印となる景色、記憶、仲間との接触なども利用します。

アリの行列はどうやってできる?

例えば、餌を探していた働きアリが食べ物を見つけたとします。道しるべフェロモンを使う種類では、巣へ戻る途中などに化学物質を地面へ残し、仲間が餌場に向かう手がかりをつくります。

  1. 最初のアリが餌を見つける。
  2. アリが帰り道などにフェロモンを残す。
  3. 別の働きアリが触角でにおいを感じ、道をたどる。
  4. 餌を持ち帰るアリが道を補強し、さらに多くのアリが集まる。

このように、アリが集まるほど道が強くなり、強い道ほどアリが集まりやすくなる現象を「正のフィードバック」と呼びます。最初から誰かが行列全体を指揮しているわけではありません。個々のアリの比較的単純な行動が重なって、集団として整った動きが現れます。

アリはどうやってにおいの道を見つけるの?

アリの頭にある2本の触角は、化学物質を感じ取る重要な器官です。道しるべフェロモンがある場所で触角を動かしながら歩くことで、進む方向を調整できます。

フェロモンは人間が香水を感じるような「におい」の仲間ですが、アリにとっては仲間の行動を変える情報です。化学物質の種類や働きはアリの種によって異なり、ひとつの物質だけを使う場合も、複数を組み合わせる場合もあります。

なぜ短い道にアリが集まりやすいの?

1989年に発表されたアルゼンチンアリの実験では、巣と餌を結ぶ長さの異なる2つの通路を用意すると、集団が短い通路に集中する現象が観察されました。

短い道を通ったアリは、長い道を通ったアリより早く往復しやすくなります。その結果、短い道にフェロモンが追加される回数が増え、後続のアリがその道を選びやすくなると考えられます。

重要なのは、一匹一匹のアリが地図を見て最短距離を計算しているわけではないという点です。個体の行動と仲間の残した情報が重なることで、集団として効率的な経路が現れるのです。ただし、どんな地形でも必ず最短経路を選べるわけではありません。

餌がなくなったら行列はどうなる?

餌場を利用する価値がなくなると、道を補強するアリが減ることがあります。フェロモンは時間とともに蒸発したり分解されたりするため、道しるべが弱まり、行列も薄くなっていきます。これは、使わなくなった道の情報が自然に消えていく仕組みです。

一方、フェロモンの残り方や道の使われ方は種類によって違います。すべての行列がすぐに消えるとは限りません。

アリの行列が途切れると迷う?

行列の途中に障害物ができたり、道しるべが途切れたりすると、アリがその場で進路を探す様子が見られることがあります。しかし、道しるべフェロモンだけがアリの手がかりではありません。種類によっては視覚的な目印や、過去に歩いた道の記憶も使います。

観察するときは、巣を壊したり薬品をまいたりせず、アリの通り道を静かに眺めてみましょう。行列の幅や、餌を持ったアリがどちらへ向かうかを見比べるだけでも発見があります。

アリは「におい」で情報を伝える社会性昆虫

アリの行列は、仲間と情報を共有する仕組みの一例です。アリとほかの生き物の関係を知りたい方は、アリとアブラムシの共生の仕組みも参考になります。

同じ社会性昆虫でも、ミツバチは餌場の方向や距離に関する情報をダンスで伝えることが知られています。詳しくはミツバチのダンスの仕組みで解説しています。

まとめ

アリが行列をつくるのは、主に仲間の残した道しるべフェロモンをたどるためです。餌場への往復が繰り返されると道が補強され、アリが集まりやすくなります。短い道に自然と集中する場合もありますが、すべてのアリが同じ方法で移動するわけではありません。小さな昆虫の行列には、集団で情報を利用する生物学の面白さが詰まっています。

参考文献

  1. Goss S, Aron S, Deneubourg JL, Pasteels JM. Self-organized shortcuts in the Argentine ant. Naturwissenschaften. 1989;76:579–581. doi:10.1007/BF00462870
  2. Deneubourg JL, Aron S, Goss S, Pasteels JM. The self-organizing exploratory pattern of the Argentine ant. Journal of Insect Behavior. 1990;3:159–168. doi:10.1007/BF01417909
  3. Morgan ED. Trail pheromones of ants. Physiological Entomology. 2009;34:1–17. doi:10.1111/j.1365-3032.2008.00658.x
  4. Czaczkes TJ, Grüter C, Ratnieks FLW. Trail Pheromones: An Integrative View of Their Role in Social Insect Colony Organization. Annual Review of Entomology. 2015;60:581–599. doi:10.1146/annurev-ento-010814-020627

アイキャッチ写真:hybridnighthawk / Unsplash

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