はじめに|「菌って体に悪いものじゃないの?」と思ったことはありませんか
「腸内細菌が大事らしい」
「善玉菌・悪玉菌ってよく聞くけど、結局なに?」
「除菌しすぎるのは良くないって本当?」
こんな疑問を、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
私たちの体の中には、自分の細胞よりも多い数の微生物が暮らしています。
それなのに、その存在や役割は意外と知られていません。
この記事では、
体の中に住む微生物たちが
- なぜ必要なのか
- どこで何をしているのか
- 私たちの生活とどう関係しているのか
を、科学的に正確かつ、できるだけ身近な言葉で解説します。
「微生物=敵」という思い込みが変わり、
日常の行動をどう変えればいいかまで分かる内容です。
結論|体の中の微生物は「勝手にいる存在」ではなく「一緒に生きるパートナー」
最初に結論をお伝えします。
体内の微生物は
私たちの健康を支えるために存在している共同生活者です。
消化、免疫、ホルモン、さらには性格や行動にまで影響を与えています。
つまり、微生物を理解することは「自分の体を理解すること」そのものです。
① 腸だけじゃない|微生物は全身に住んでいる

科学的な理由
微生物というと腸内細菌が有名ですが、
実際には以下の場所にも常在しています。
- 皮膚
- 口の中
- 鼻腔
- 肺
- 胃
- 腸
- 泌尿生殖器
これらをまとめてヒトマイクロバイオームと呼びます。
例えるなら、
体は「1つの家」ではなく、
微生物が部屋ごとに役割分担して住む巨大なマンションのようなものです。
日常生活との関係
- 皮膚の微生物 → 肌荒れ・ニオイ・感染防御
- 口腔内微生物 → 虫歯・歯周病・誤嚥性肺炎
- 腸内微生物 → 便通・免疫・メンタル
「どこが不調か」は
「どの微生物環境が乱れているか」と強く関係します。
② 実は免疫の先生|体内微生物は免疫を教育している

科学的な理由
免疫細胞は、生まれた直後はほぼ未熟です。
そこから成長する過程で、
- 何が敵か
- 何は無視していいか
を微生物との接触によって学習します。
これを
**免疫寛容(めんえきかんよう)**と呼びます。
具体例
- 微生物が少なすぎる
→ アレルギーや自己免疫疾患が起こりやすい - 微生物が適度にいる
→ 免疫が暴走しにくい
過度な除菌が問題視される理由はここにあります。
③ マイナーだけど重要|腸内細菌はビタミンを作っている

あまり知られていませんが、
腸内細菌は**栄養の「加工工場」**でもあります。
作られる主な物質
- ビタミンK(血液凝固に必須)
- ビオチン(皮膚・髪・神経)
- 葉酸の一部
食事だけでは補いきれない栄養を、
体内で再生産しているのです。
日常への影響
- 抗生物質を長期使用
→ 腸内細菌減少
→ 栄養不足・下痢・体調不良
薬の副作用が出る理由も、
微生物を通して見ると理解しやすくなります。
④ 実は脳ともつながっている|腸と脳の意外な関係

科学的な理由
腸と脳は
迷走神経やホルモンで直接つながっています。
これを
腸脳相関と呼びます。
腸内細菌は、
- セロトニン前駆物質
- GABA様物質
など、神経伝達に関わる物質の産生に影響します。
具体例
- 腸内環境が乱れる
→ 不安感・集中力低下 - ストレスが続く
→ 腸内細菌が減る
「お腹が弱ると気分も落ちる」は、気のせいではありません。
⑤ 微生物にも個性がある|同じ食事でも効果が違う理由

これは比較的新しい研究分野ですが、非常に重要です。
科学的背景
人によって、
- 微生物の種類
- バランス
- 数
が大きく異なります。
そのため、
- 同じヨーグルト
- 同じ発酵食品
でも、効果が出る人・出ない人がいるのです。
日常での考え方
「◯◯が体にいい」ではなく
「自分に合うかどうか」が大切です。
⑥ じゃあどうすればいい?|微生物と上手につき合う現実的な方法

今日からできる選択肢
- 極端な除菌を避ける
- 食物繊維を意識する
- 発酵食品を“少量・継続”で試す
- 睡眠とストレス管理を重視する
サプリや商品について
腸内環境サポート商品も選択肢の一つですが、
- 効果は個人差が大きい
- 食事改善だけで十分な人も多い
という点は知っておく必要があります。
「試してみて合えば続ける」
それくらいの距離感が現実的です。
よくある誤解と注意点
- 菌は多ければ多いほど良い → ❌
- 善玉菌だけ増やせばいい → ❌
- 一度整えれば一生安定 → ❌
バランスと変化が何より重要です。
まとめ|微生物を知ることは、自分の体と仲良くなること
体の中の微生物は、
見えないけれど確実に働いています。
敵でも、万能な味方でもなく、
一緒に暮らす存在です。
知識を持つことで、
- 不安に振り回されず
- 極端な健康法に走らず
- 自分に合った選択
ができるようになります。
参考文献
- Human Microbiome Project(NIH)
- Gut–Brain Axis Review(Nature Reviews Neuroscience)
- Role of gut microbiota in human nutrition(PMC)
- Skin microbiome and health(Frontiers in Microbiology)

