【最終手段!?】動物が行う死んだふりの科学とは?

サイエンス

 動物界において、自己保護のために様々な戦略が存在しますが、その中でも死んだふりは特に興味深い行動の一つです。本記事では、死んだふりの定義や最終手段としての役割、そしてそれが天敵からのみならず同種間の関係においても重要であることについて探求します。また、研究によって明らかになった高緯度地域の生物がより頻繁にこの行動をとる傾向についても触れられます。

死んだふりとは何か?

 死んだふりは、動物が自身を守るためにとる行動の一つです。危険を感じたときやストレスがかかったとき、動物は周囲に自らの存在を消し去るような振る舞いをすることがあります。これは、獲物から身を守るための防衛本能の一部です。科学的には、擬死と呼ばれています。

モアイ研究所
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人間にはあまり見られない行動ですね。

死んだふりは最終手段?その手法とは

 多くの場合は外敵から身を守るために動物たちは死んだふりを行います。しかし、死んだふりは、完全な活動停止を行う必要があるため、食事や繁殖などの生活活動に対して支障をきたす可能性があります。つまり、死んだふりは最終手段でもあるわけです。死んだふりを行う種類が多い昆虫では、足を体に折りたたむ行動をとります。その他の動物では、死臭を出したり、体温を低下させ、心拍数、呼吸数を減らしたり、血を吐くなどの手法をとるものもいます。

モアイ研究所
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心拍数を減らしたり、体温を低下させるのにもエネルギーが必要と考えられるので、まさに、自分の体を犠牲にしているといえます。

実は天敵から逃れるだけじゃない!?

  ここまでの死んだふりは、天敵から身を守るための最終手段でしたが、ルリボシヤンマのメスは、少し違うようです。

Female dragonflies use an extreme tactic to get rid of unwanted suitors: they drop out the sky and then pretend to be dead.

Female dragonflies fake sudden death to avoid male advances
By Sandrine Ceurstemont
https://www.newscientist.com/article/2129185-female-dragonflies-fake-sudden-death-to-avoid-male-advances/

ルリボシヤンマというトンボは、オスとの交尾を断るために、空中から墜落して、仰向けになったまま停止するという行動をとるという。つまり死んだふりです。ルリボシヤンマは、一度の交尾で受精を完了させることができるため、複数回の交尾はエネルギーや生殖器官への負荷になるという。このように死んだふりは少し違う用途もあります。天敵に対面した時だけではなく同種の中でも自分の身を守るために死んだふりは利用されます。

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いずれにせよ、今の研究結果では、自分の身を守るために行う行動という考え方が一般的なようです。もしかすると、別の用途があるかもしれませんね。

トンボに関する記事はこちら

北の昆虫ほどよく死んだふりをする?


 この研究では、高緯度地域の個体群ほど、死んだふりの持続時間が長く、頻度も高い傾向がありました。これは、環境条件や地理的な遺伝的要因がこの行動に影響を与えている可能性があります。さらに、性による差異も観察され、オスはメスよりも死んだふりを頻繁に行う傾向がありました。この研究結果については、高緯度にいる生き物が”死ぬ”という行動に低緯度にいる生き物と何らかの違いがあると考えられ、天敵側が、「この生き物は死んでいる」という判断基準がどのように違うのか明らかにする必要があるでしょう。

引用:
Latitudinal cline of death-feigning behaviour in a beetle (Tribolium castaneum)
Kentarou Matsumura Takahiro Miyatake
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2023.0028

まとめ

 死んだふりは、生物が自身を守るための奥深い戦略の一つであり、その行動には環境や地理的要因、さらには個体の性別による違いが存在することが示唆されています。未だ解明されていない謎も多いこの行動に関する研究は今後も重要であり、生物学や行動学における理解を深める上で貴重な示唆を与えています。

モアイ研究所
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興味深い行動なので、今後の研究の進歩が期待されます。ただ、現在の研究では進歩しにくい、隙間産業のような分野でもあるため、小学生の自由研究などで詳しく調べてみるとすごいことがわかるかもしれませんね。

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